藤垂園の家／TOTO リモデルクラブからの



家族が憩い、友達の集まる白いステージ
『ちょっとでも気に入らないところがあると、全部がイヤになちゃうことってありません？リモデル前のうちが、ちょうどそんな状態でした』ご夫妻は、結婚された年にマイホームを新築。しかしそれから17年の歳月が経ち、各所に不具合が生じてきました。外装は一度塗り直したのですが、室内はほとんどそのまま。古いだけでなく、デザインテイストも家族の望むイメージとそぐわなくなっていたようです。自分たちだけの生活空間なら、まだ我慢できたかもしれません。しかしご主人も奥様も来客が多く、大勢の方を室内にお招きする機会が多いいのです。とくに奥様はビーズ教室を自宅で月に数回開いており、定期的にお客さまが見えます。雑然とした室内を見せるのも嫌でしょうが、気の乗らない空間を自分たちのセンスと受け取られるのも不本意なもの。『主人も私も北欧調のシンプルモダンな空間が好きなのに、室内は日本の応接間風（笑）。自分たちのイメージする部屋にお客様をお通しできないジレンマがありましたね』古さ、デザイン…悩ませる原因はいくつかありましたが、最大の理由は、室内が開放的でなかったこと。広さは十分あるのですが、天井がさほど高くなくて、暗いイメージもあって閉塞感を覚えていたようです。『実はこの辺りは隣家が建て込んでいるんです。気にしすぎないんでしょうけど、外から見られないかと心配で、いつもレースのカーテンを引いていました。開ければどんなに気持ちいいだろうと思っても、なぜか躊躇しちゃって』広さに対して収納スペースが十分でないのも問題の１つ。『テーブルや家具の上に、小物がいつも散らかっている状態。お客様がお見えになっても、しまえる場所がないんです。家具を置こうにも固定壁が少なく、場所が極端に限定されて収納も増やせません。おまけに部屋の扉を開け放つと寒いし、かといって閉めると今度は狭く感じて…』と、使い勝っての悪さにやきもき。こうした問題を一挙解決すべく、仕事上知り合った建築家の助けを受け、根本的なリニューアルに向けて動き出していったのです。暗さの解決のためには、広い開口部が必要です。
しかし、プライバシーはきちんと守られたい。この解決策が、リビング横に広いバルコニーを設けること、そしてその外側をルーバーで覆い、外部からの視線をシャットアウトすることでした。『縦長のリビングだけに横幅が狭く見えたんですが、バルコニーによってうんと広がりましたね。よそからの視線も気にならなくなったとたん、これまで窓に背を向けていたイメージが、一気に開放的になって…」2階に広いバルコニーを設けると、階下が暗くなりかねませんんが、半分をグレーチングにして1階にも光が射し込むよう配慮。地面にシャラの木を植え、2階にまで伸ばしてグリーンも配置されました。加えて鉢植えのガーデニングも、窓も可能な限り大きく取られ、光、風、緑の感じられる空間となりました。いっぽう室内は全体をホワイトでまとめ、粗めの塗り壁にして、テクスチャーを演出。昼間は自然光を優しく受け止め、夜は間接照明によって、その陰影をいっそう際だたせます。『メンテナンスが大変かなとも思いましたが、この色で正解でした。太陽や照明の変化を見事に受け止めて、表情を刻々と変えてくれるんですから』ホワイトのトーンは廊下や玄関、トイレや洗面空間にまで踏襲され、清潔感と高級感を家全体にもたらしています。ご夫婦がとりわけこだわった玄関は、床に大理石をあしらい、白の回廊といった趣。訪れる人を驚かせる仕掛けにもなっています。さて、開放的になった空間はLDKがシステムキッチンやダイニングテーブル、ソファのとで緩やかにゾーニングされています。ソファの前には50インチのプラズマテレビが配され、どの場所からでも思い思いのスタイルで愉しめます。テレビの裏側にはパソコンの置かれた多目的の趣味コーナーも設けられ、ふだん奥様のビーズづくりもここで行われます。こうして完成したモダンな白い空間は、お客様を迎える前に、まずご家族が日々の生活を豊かにする場として機能しています。『部屋にこもりがちだった子供が、ここにいることが多くなりましたね。夕食の後は、映画などDVDを家族で楽しんでいます。え、お客様？ここならもちらん笑顔で迎えられます』もてなしの場所というのは、実はまず、そこに暮らすご家族が気持ちよく住まえる場所のよう。お客様を迎えるためにちょっぴり背伸びした空間は、生活者に心地よい緊張感をもたらしているのですから。