コートハウス2/週刊朝日 わたしの理想の家に掲載
ルーバー採用で光と風を適度に
コンクリート打放しの滑らかな外観と、対照的な木製ルーバーの格子。ルーバーの内側は、1階が中庭、2階はウッドデッキのテラスになっている。直方体の建物の南東部分4分の1を、さっくり切り取ったような形だ。中庭とテラスを囲む2辺は、ほぼ全面が窓。中庭で外部とワンクションおきながら、完全に遮断していない。ロールスクリーンを上げたままで開放的に過ごせる空間が欲しい、というのはインテリアコーディネーターの夫人の希望だった。日々、家づくりをサポートしている夫人だが、『わが家』を建てる際の注文は驚くほど少なかった。散歩の途中に目にして『素敵だなと思っていた』2棟の建物が、同じ建築家の手がけた家だと知り、その建築家に依頼することに決めからだ。『完全に信頼していたので、必要以上に細かい打ち合わせはしないまま、第一案で決定、という感じでしたね』と夫人。住宅やマンションが建て込んだ環境にもかかわらず、さんさんと日の入るLDKがとりわけ気に入っているという。テラスでは、引っ越して間もなく迎えた昨年の夏、さっそく子供のためにびにーるプールをだした。そのころは心地よい木陰を作っていたシンボルツリーのケヤキは、紅葉の季節を経て冬枯れの今、すっかり葉を落した状態。4分の1の庭が、家の中に季節感をもたらしている。辺りが暗くなると、ルーバーの内側からの光をたたえ、ケヤキの樹陰が浮かびあがる。仕事帰り、明かりのついた家を目にする瞬間が『すごく、いい』というのが会社員のご主人と夫人の、素直な感想だ。
専門家からのワンポイント
ある程度の広さの庭を持つ家の場合、周囲からの視線をどのようにカットするかが問題となる。自宅の庭でバーベキュー、パーティーをするのが夢だったのが、近隣からの視線が気になってままならい、といった事態がおきている。機能を失った庭は、雑草処理をしなければならないだけの無意味な空間と化してしまう。庭の機能を高める常套手段だったが、デザイン的に制約が大きいし、なによりコストがかかる。さらにはメンテナンスの手間や費用もばかにならない。あまり高くすると、光や風までもせえぎってしまうという弊害もある。そこで最近では、樹脂、木材、金属といったさまざま素材のルーバー(横桟がスリット状に組まれているもの)が開発されている。ルーバーならば光や風も通すし、デザイン性も優れている。低コストで施工もしやすいから検討の価値は大いにある。この家の中庭もルーバーで囲うことで正方形のシンプルな空間を生み出している。昼間は外部から光と風を誘い、夜は室内の明かりを漏らす仕組みだ。
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